映画「チェイサー」 ~デリヘルヒーローが追うのは闇か光か~



 

今日はまた暑い一日となりましたが、一日ご来店のお客様に恵まれて、弊社と致しましても、

次のステップを踏めることが出来、何よりでございました。

かなり暑かったですが、皆様におかれましても、どうか熱中症にならないように、

水分と塩分を補給して頂けたらと思います。

 

今日取り上げる映画は、『チェイサー』(2008年)です。

過去のブログで取り上げたものに、加筆修正して、再編集したものとなります。

あらすじ(シネマトゥデイより)~~~~

デリヘルを経営する元刑事ジュンホ(キム・ユンソク)のところから女たちが相次いで失踪(しっそう)して、

ときを同じくして街では連続猟奇殺人事件が発生する。

ジュンホは女たちが残した携帯電話の番号から客の一人ヨンミン(ハ・ジョンウ)にたどり着く。

ヨンミンはあっけなく逮捕されて自供するが、証拠不十分で再び街に放たれてしまい……。

~~~~という出だして、話が始まります。

 

実際の韓国で行われた、ソウル20人連続殺人事件をベースに作られているので、

邦画「冷たい熱帯魚」に近いものがあります。

 

(「冷たい熱帯魚」は埼玉県愛犬家連続殺人事件がベースになっています)

実話をベースにしているという強みがあるので、何か無茶苦茶な事が起こっても、

「実話だから」という点は、非常にリアリティーがあると感じさせられますね。

 

主人公が元刑事の、今はデリヘル経営者(経営者と言っても上には専務がいるので、店長としての店を任されている支店長)で、

話が進むにつれて、刑事時代に売春をあっせんしたことがばれて、

汚職で刑事を首になって、今の仕事についている事が分かります。

 

主人公ジュンホを、完全懲悪的な正義のヒーローでは無くて、むしろ正義感の薄い、小悪党。

メタボ検診を受ければおそらく引っかかるであろう、格好良いとはなかなか言えない外見、

性格も悪く、従業員に対する態度も悪い。

普通の映画であったら、主人公役ではない、性格の悪い風俗店経営者の冴えないおっさんにした事が、

この映画により一層、現実感を与えていると言えます。

 

ジュンホは、売り上げが少ないと、専務に電話で責め立てられ、相次いでデリヘル嬢が失踪していた事もあり、

他に代わりが居ないので、風邪で寝込んでいたデリヘル嬢のミジンを、ジュンホは強引にヨンミンとの待ち合わせ場所に、

行かせるのですが、ミジンは帰って来ません。

逃げられたと思ったジュンホは、ヨンミンを追跡し、ミジンの娘からは「ゴミ野郎」呼ばわりされながら、

最初はとにかく金のために、ヨンミンを追跡します。

しかし真相が徐々に分かってくる途中から、ジュンホは、内面を吐露する様な台詞を、ほとんど話さなくなります。

これは、内面の変化を言葉で説明することで、安っぽい演出になってしまう事を避けたからだと思います。

 

そして、その追跡劇は、必死でそして限りなく小汚い!!

ナ・ホンジン監督らしく、画面が小汚く、砂と、埃と、大量の汗と、血液と、泥水で埋め尽くされる感覚は、

どこで撮影をしても、画面が小汚くなる、ニール・ブロムカンプ監督作品に似たものがあります。

(ニール・ブロムカンプ 「第9地区」より)

 

話としては凄惨で壮絶で、観終わった後で途方もない絶望感に襲われる作品ですが、

というより、ナ・ホンジンと言う人は、初めからハッピーエンドなど全く考えていない人だという事が、

このデビュー作品を見るとより鮮明で、とにかく最後が凄まじい。

この辺りの感覚が、最後はハッピーエンドになる作品が多い、ハリウッド作品の文脈と、一線を隔しています。

この映画は、ハリウッドがリメイク権を持って、ディカプリオ主演でリメイクをするらしいのですが、

ヨンミン役にディカプリオを据えて、ジュンホ役は、あまり格好良くない俳優がやれば良いのではと思います。

 

これは格好が良くないおっさんが、必死に追跡をする事に、深い意味がある映画なので。

文句無しに、オススメの作品です。

 

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